逆ナンパ”。男性なら一度は憧れるだろう。魅惑の逆ナンが売りのカフェが昨年オープンしたと聞き、記者は鼻息荒く乗り込んだ。
東京・歌舞伎町のとある雑居ビルの中。受付で利用が初めてと告げると、入会金3千円に、サービス利用料4千円、計7千円のお支払い。高い。
先客は5人。壁の片側一面が鏡張り、つまりマジックミラーだ。その向こうでは女性がこちらに熱い視線を注いでいるに違いない。3分ほど待っただろうか。
「ツーショットルーム2番へお入りください」
先客を差し置いて指名を受ける優越感はなかなか。カーテンで仕切られた小部屋に入ると、女優の本田翼に似た小柄な女性が待っていた。
「A子です。年は25です。よろしくお願いします」
六本木のOLで、仕事帰りにこのカフェに寄ることがあるという。
「もしよろしければこの後、お食事とかどうですか」
と、積極的にA子さんが誘ってくる。ツーショットタイムは10分間。目の前の女性を外に連れ出すか、チェンジするか、男性に選択権がある。連れ出してしまえば店の干渉は一切受けないらしい。選択の時だ。
「軽くお酒だけでも……」
上目遣いの追い打ちに即決した。
控室に一度戻ったA子さんを店外で数分待つ。現れたA子さんは、さっきの愛想のよさはどこへやら、別人のような仏頂面。洒落た焼き肉店へ入っても態度は変わらず。席に着くなりA子さんはニコリともせず、
「交通費を先にください」 え?と思わず声が出た。会員登録の際に交通費を払う必要など説明されなかったし、終電まで時間の余裕はたっぷりある。ちなみにいくら欲しいのか聞くと、
「1万円か、安くても5千円かな」
いったいどこまで帰るつもりなのか。ごねるとサヨナラになりそうなので、しぶしぶ5千円お支払い。
「もしかして金払い悪い?」
こんな露骨に金のにおいを嗅がせるデートってあるんだろうか。よく見ればかわいくないし、本田翼にも似てない。ならば裏話だけでも聞きだそう。どんな男性が人気か聞いてみた。
「スーツ姿のオジサンで気弱そうな人が人気だね」
彼女によれば「カモ」だという。また、新規の客も人気があるらしい。遊び慣れておらず、言われるままにお金を払う客が多く、女性同士で取り合うこともよくあるとか。指名に小躍りしていた自分を殴りたい。
もう少し話をしたいと頼み、返ってきた答えは、
「そろそろ帰りたいし、1万円くれるならいいよ」
こんな出会いしかないのか。風俗ライターの高木瑞穂氏に聞いた。
「その女性は『茶飯女』ですね。タダ飯に心づけももらって月に数万円稼ぐ女性です。婚活バーや相席居酒屋を想像して行くと痛い目見ますよ。女性の9割超がお金目当てですから」
逆ナンとは何だったのか。入会金に利用料、交通費、焼き肉代。約2万円払って得たものは、虚無感。ため息深く、新宿を後にした。
歌舞伎町にある「逆ナンカフェ」を潜入調査している。片側一面マジックミラーの部屋にいると、女性から指名を受けたと筆者。食事することになったが、先に「交通費」として1万円を請求されたという