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朝日新聞デジタル
平塚駅で10年続けたエール 幸せ配達人、今日でお別れ
遠藤雄二2018年12月28日07時04分
写真・図版 親指を立て行き交う人たちにエールを送る大門三郎さん=2018年12月14日午前8時23分、神奈川県平塚市のJR平塚駅北口、遠藤雄二撮影
親指を立て行き交う人たちにエールを送る大門三郎さん=2018年12月14日午前8時23分、神奈川県平塚市のJR平塚駅北口、遠藤雄二撮影
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イエーイ、いいことがありますように――。神奈川県の平塚駅北口で平日のほぼ毎朝、通勤・通学で行き交う人たちにエールを送る自称「幸せ配達人」の大門三郎さん(69)が、10年余りの活動に28日、終止符を打つ。寒い日も酷暑の日も、なぜ立ち続けたのだろうか。
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朝7時半ごろ、大門さんは自転車で平塚駅北口に乗りつける。黄色のジャケットに紅白の縦じまズボンというど派手な衣装。親指を立て、笑顔で「何があっても大丈夫!」。
ホームや勤務先に急ぐ人の多くは無言で通り過ぎる。「無視されて当たり前。応じてくれる人が1%でも感謝です」
同じ指のポーズを返したり、笑顔で会釈したりする人も。今月21日、スーツ姿の初老の男性が立ち止まり何か語りかけた。大門さんと同世代で横浜の会社の役員だという。「毎日やるのはすごいこと」。経営が厳しいときも励まされたという。恥ずかしそうに小さく親指を立てた女性(28)は「いいパワーをもらっていると思います」。
大門さんは鹿児島県種子島出身。高校卒業後、横浜で就職し、平塚でタイル職人になった。独立し、好景気のなか仕事は順調だった。しかし歌手になる夢が諦めきれず、30歳でウクレレ漫談の牧伸二に弟子入り。会社は弟に譲り、歌手デビューを果たした。
2008年9月、新曲「幸せじゃん」をPRするため平塚駅前に立った。「頑張ってね」という市民の言葉が身にしみ、お返しに始めたのが今のスタイルになった。「朝行かないと、寂しい気がして」
持ち歌とものまねでショーやイベントに出演する傍ら、独自の療法による治療院を営んだ。妻の支えで2人の娘を育てた。
平塚の借家の契約更新ができず、貸していた種子島の実家が空き家になるなどの事情が重なり、故郷に帰る決断をしたという。
最後の28日朝は、平塚駅前でお別れのあいさつをする予定だ。種子島でも「会う人、会う人に幸せのメッセージを送りますよ」もあるだろうし、感染はもっと広がっていると思う」