ソウルの在韓日本大使館前の路上に不法設置されている慰安婦像。今度は亡くなった元慰安婦の女性を追悼するプレートが取り付けられた。韓国外務省の報道官は「政府が(言う)立場ではない」と黙認する構えである
ソウルの在韓日本大使館前の路上に、不法設置されている「慰安婦像」に加えて、今度は亡くなった元慰安婦の女性を追悼するプレートが取り付けられた。
日韓の市民団体が“贈呈”したものだという。
大使館前では毎週水曜日に日本に抗議する集会が開かれている。6日に行われた集会には、日本の市民団体「東アジア市民ネットワーク」のメンバーも参加。聯合ニュースなどによると、東アジア市民ネットワークは韓国の社団法人とともに、集会を主催する元慰安婦支援団体の「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」に、5枚の追悼プレートを渡したという。
追悼プレートは、大使館前の慰安婦像を作った韓国人の彫刻家夫妻とドイツ人彫刻家の手によるもの。プレートのうち3枚は、「真実のためにここに立った女性」との文字と、金学順さんら元慰安婦3人の生没年月日と出生地、「日本軍による被害」に遭った場所や当時の年齢が、ハングルと英文でそれぞれ記されている。また、残り2枚には、「名もなき日本軍慰安婦犠牲者を記憶して」との言葉がハングルとドイツ語で記されている。
聯合ニュースによれば、プレートを贈った「東アジア市民ネットワーク」の殿平善彦代表は、「安倍晋三首相は被害者(元慰安婦)に直接、誠意のある言葉で謝罪し、被害者がもういいと言うまで謝り続けるべきだ」と話した。この日の集会に参加していた元慰安婦の女性からも深く感謝されたという。
追悼プレートの設置は、大使館前での抗議集会や、地元行政当局の許可なしに置かれた慰安婦像と同様、外国公館の前での侮辱行為を禁じる「ウィーン条約」に違反する行為だ。それなのに、慰安婦像について、韓国政府は朴槿恵大統領をはじめ、「民間で自発的に設置したものだから、政府が『ああしろ、こうしろ』とはいえない」との立場をとり、黙認、放置している。
韓国外務省の報道官は7日の定例会見で、追悼プレート設置についての質問に対し、「それこそ、市民団体が自発的にしたことだ。よって、政府が(言う)立場ではないと思う」と述べた。慰安婦像と同様に、追悼プレートの設置についても黙認する構えだ。
昨年12月に日韓は、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」で合意したにもかかわらず、また、日本政府の再三の抗議にもかかわらず、慰安婦像は撤去されず、大使館前に居座り続けている。それどころか、追悼プレートまで加わり、ウィーン条約への「違反事項」はまた一つ増えてしまった。
日本大使館前の慰安婦像の周囲では、日本に抗議する掲示物が多数、フェンスに張られている。韓国政府が“放任”を続ける一方で、日本大使館前での元慰安婦の“聖域化”は、ますます進んでいる。