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竹中平蔵「日本の1000兆円の借金は問題ない」
この本を書いた高橋洋一氏は、かつて私が小泉内閣時代に郵政民営化に取り組んだとき補佐役として助けてくれた仲間であり、東大の数学科を出て大蔵省に入った異才です。
彼いわく、文系の人は数字に苦手意識があるけれども、実は数字って細かい部分を見る必要は一切ない。大きな数字の枠組みを組み合わせるだけで、物事をクリティカルに考えることができるんです。
「大きな枠組みで考える」ということを具体的に説明しましょう。日本はGDPの2倍ぐらいの債務を持っている財政赤字の国だと言うけれども、実はGDPの1.5倍ぐらいの資産を持っているんですよね。そうすると日本の負の資産というのは言われているほど大きくはないんです。
だから、高橋氏も私も消費税の拙速な引き上げにはずっと反対しています。そんなことより売れる資産がたくさんあるから売れと。考えてみれば、政府はその資産を使って特殊法人をつくって、そこにたくさん天下らせているじゃないか。そういったことを全部見抜くために、大きな数字というのが役に立つということなんです。
“そして、これもあたりまえの話なのだが、「資産」から「負債」を引くと「純資産」となる。「資産」の大きさや「負債」の大きさが問題ではなく、「純資産」の大きさ=「純資産がプラスかマイナスか」が問題なのである”
これをふまえて政府の貸借対照表(BS)を見てみると、財務省(旧大蔵省)が1980年代から主張している「日本は今1000兆円の借金がある」という論もいたずらに不安を煽るための話だということが見抜けます。
2017年度の政府のBSでは、負債の部の「公債」が約966兆円。「政府短期証券」の約76兆円と合わせて、「借金1000兆円」と言っているのです。
しかし、先ほど述べた通り重要なのは資産と負債のバランスです。資産から負債を引いた純資産は、約マイナス568兆円になります。この数字は政府の話として見れば問題のないレベル。借金額だけを強調し、増税を推し進めることがいかにばかげているかがわかるのです。