5月12日は、フローレンス・ナイチンゲールの生誕にちなんだ「看護の日」。この日をきっかけに、改めて看護師の労働実態に目を向けたい。
■患者を簡単にベッドに拘束…
「病院では、患者さんに簡単に抑制帯をつけてベッドに拘束していました。患者さんを雑に扱う、そんな病院だったのかとショックでした。コロナで倫理観が揺らぎ、看護師も傷つきました。心身共に疲れて、消耗して、辞めていくナースが増えました」
感染症の専門病院で働く看護師が、コロナ禍のなかでの労働実態を振り返った。
「防護服を着ていったんコロナ病棟に入れば勤務が終わるまでコロナ病棟から出られません。トイレに行くこともままならず、膀胱炎になりかけながら汗だくになって働きました。もともと寝たきりの人がコロナに感染してコロナ病棟に入院すると、看護だけでなく介護も必要で負担は大きかったです。看護師や家族がコロナになって次々にスタッフが休むと、これからいったいどうなるのかという思いになりました」
救急医療を担う現場からは「人手が足りず、3交代の夜勤が月12~13回に及んでいます。救急で来た患者さんが治療を受けるのに、180分待ちということもあります。手術時間の延長や緊急オペも多く、看護師は疲れ果てて次々に辞めてしまうので定着しません」という実情が語られた。
■仕事を辞めたい看護師が「8割」の衝撃
そもそもコロナと関係なく、医療現場の看護師の労働問題を原因とする人員不足は、長年の課題だ。
看護師の疲弊ぶりは深刻で、7割の看護師が健康不安を訴えている。時間外労働が多く休憩時間が十分に取れないほど健康不安を感じており、夜勤で休憩が「取れていない」というケースが準夜勤で4割、深夜勤で3割に上った。慢性疲労を8割が訴え、日勤だけの勤務よりも夜勤のある看護師のほうが10ポイント高かった。
仕事を辞めたい看護師が8割に上り、理由(3つまで選択)のトップは「人手不足できつい」(58.1%)、2位「賃金が安い」(42.6%)、3位「休暇がとれない」(32.6%)、4位「夜勤がつらい」(23.6%)、5位「達成感がない」(23.1%)、6位「職場の人間関係」(20.1%)だった。同調査は約5年ごとに30年以上続けられており、この傾向は変わっていない。