今どきの学生はどんな結婚を理想としているのか。社会学者の山田昌弘さんは「大学生と話してみると、“ザ・昭和”な結婚観・家族観を持っていることに気付かされる。だが、今の日本でそれを実現するのは非現実的だ」という――。
■「自分は昔ながらの結婚をしたい」という若者の本音
女子学生なら「ある程度の年収の男性と結婚して、専業主婦になりたい」、「自分も働いてもいいが、ある程度の生活の質を確保するために、男性にもそこそこの収入を望みたい」「結婚当初は賃貸でもいいが、いずれはマイホームを買って暮らしたい」「子どもは2人、なおかつペットと共に生活したい」「夫の定年退職後はあくせくせず、趣味の時間をたくさん持ちたい」。
「バリバリ働いて人生を切り拓いていきたい」という女子学生も増えていますが、大半は昭和時代に生きてきた私世代とほとんど同じ、「ザ・昭和」的結婚観を維持していることに、内心かなり驚かされてきました。
■「自分だけは大丈夫」と思い込んでいる
しかし、どれほど社会が変わろうと、人々が思い描く「日本人として幸せな人生の理想像」に大きな変化がないのは、いったいなぜなのか。疑問に思った私は、少々意地悪かもしれませんが、学生たちに向かって、あえてこんな言葉をぶつけてみることがあります。
「40歳以下の日本人の4分の1は一生結婚できないんだぞ」
「結婚しても、3組に1組は離婚するんだぞ」
と。しかし、彼らにとってこんな脅しは、ほとんど意味はないようです。さすがに社会学専攻の学生たちですから、こうした数字は頭では理解しています。でも、「自分はその中には入らない」と、根拠なく信じている。「自分だけは大丈夫」だと思い込んでいるのです。不安を持つようになった学生もいますが、彼らも、「婚活するなら早い方がいいですか」「離婚しない相手を見極める方法はありますか」などと質問してきます。
■現代の若者が「イメージ通りの結婚」を手に入れるのは無理
繰り返しますが、「ザ・昭和」な結婚観・家庭観はもはや、非現実的な虚像になりつつあります。人口動態的にも経済的にも、働き方や就労スタイル的にも、今の日本では持続不可能です。
しかし令和の今、「終身雇用」「経済成長」「人口増加」を大前提とした働き方、所得収入スタイルは、大きく崩れました。親世代にはかろうじて可能だった「結婚生活」を、現代の若者の多くは手に入れることができません。要するに、“昭和のまま”の脳内イメージと現実との大きなギャップが、日本人の「結婚」を難しくしているとも言えるのです。