能登半島地震からひと月半が過ぎた。災害対策に女性の視点が足りないことが指摘されている。これまでの災害時も、避難所では「ついたてがなく、着替えができない」「生理用品が受け取れなかった」といった困りごと
兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科の松川杏寧准教授は、女性の視点は女性だけのためではなく、快適な環境にするために不可欠だと語る。
「人口の半分は女性ですから、女性の視点を入れるのは本来当然ですが、そうなっていません。避難所は、仮の生活を送る場。復興に向けて踏み出せるように、身体的にも精神的にも元気で、安心して過ごせる環境を整えなくてはなりません。普段から家事労働の多くを女性が担っている状況がありますから、女性の視点を入れなければ快適な生活環境にするのは現実的に難しいでしょう。環境が悪いと健康被害が出て、災害関連死につながることもあるのです」
「減災と男女共同参画 研修推進センター」で共同代表を務める浅野幸子さんもこう言う。
「自治会や町内会をベースとした自主防災会のリーダーが運営に携わることが多く、男性が中心です。防災指導は消防が担っていますから、力仕事のイメージも大きい。しかし、避難所ではケアの問題がとても大きいのです」
避難所でついたてがなく、着替えなどを含むプライバシーが守られていないケースがしばしば問題視されている。東日本大震災でも、「地域の人々は家族だからついたてはいらない」というリーダーの方針に、周囲の人々が反対できなかった避難所があった。地域の人間関係が運営に影響する。
松川さんによれば、避難所の女性リーダーの割合など、地域の防災組織にどのくらい女性が関わっているか、現状は把握できていないという。
では、地域の防災計画を決める地方公共団体の防災会議はどうか。内閣府男女共同参画局は、防災会議の女性委員の割合を3割以上にすることを目標にしている。2023年4月1日時点で、女性の割合は都道府県防災会議で21. 8%、市区町村防災会議で10. 8%。女性委員が一人もいない市区町村防災会議の割合は、全国で 23.8%におよぶ。
防災会議の女性委員比率が高いほうが、プライバシーの確保、健康や栄養状態、心のケア、ペット対策など、さまざまな観点について考慮されているという調査結果がある。「女性委員がゼロ」の地域は早期に女性を登用することが望まれる