「母親はまだ、ホストの仕事を認めていません」歌舞伎町のホストクラブ「Topdandy1st」に所属するDr.ななとさん(26歳・@nanasexnanato)は源氏名の通り医者として働いていたが、家…
東大に通っている友人が歌舞伎町のホストクラブでホストのアルバイトをしており、彼から「絶対に向いているから」と勧誘を受けた。
「彼の接客を見ていると、ホストは分析したり戦略を立てたりなど、考える能力が必要だと分かりました。頭を使うことは好きだったので、自分にもできるかもしれないと思い、友人と同じ店に入店しました。それに、平均賃金くらいのアルバイト代で医学部の奨学金を返すのはかなり大変です。高時給であることも、ホストを始める理由の1つでした」
まずは指名をもらうため、午前中から夕方まで大学の講義に出席したあと、週4~5日の頻度でホストクラブに出勤した。大学ではTwitter(現X)やInstagramのオープンな利用が禁止されていたため、勉強の合間に、鍵アカウントでお客さんとやりとりし、仲を深めていった。指名が増え、収入も上がっていくにつれて、「自分は医者は向いていないだろう」と、思うようになったという。
「研修医として働き始めて2カ月経ったころには、辞めたいと思うようになりました。週6日、毎日10時間ほど働き、合間に上司のカンファレンスに出席する、というハードな業務だけでなく、自分らしさが出せない日々にもストレスを感じていました。医者は患者に不安や不信感を与えないよう、個性はいらないと指導されます。ホストとは真逆の労働環境が、僕にはどうしても合いませんでした」
研修医になって半年、ななとさんの心は限界だった。
「両親に『医者を辞めて本格的にホストとして働きたい』と伝えたら、猛反対を受けました。何度も説得して父はしぶしぶ了承してくれましたが、父より教育熱心だった母はいまだに僕の選択を許していません」
ホストに復帰した2023年、SNSに元医者であることを公表したところ、ななとさんの元には驚きの声とともに、批判的な意見も届いた。
「『社会のクズになった』『立派な職業から底辺に落ちるなんて』などのひどい言葉を受けました。でも、そう言いたくなる気持ちは僕も分かるんです。医学生時代、退学したり医師の道を諦めたりする同級生を見て、同じような感情を持ちました。『自分はこんなに頑張っているのに、なんで逃げるんだろう』と、憤りを感じていました。でも今は、医者になることがすべてではないと思っています。人生の選択肢はたくさんあって、医学部を出て医者を選ぶ人もいればそうでない人もいる。ただ、それだけなんですよね。私立の医学部でアルバイトをしていたときの劣等感や研修医時代の辛さを乗り越えてきたからこそ、厳しい意見も寛容に受け止められるようになりました」