「夫婦の3組に1組が離婚する日本で「内実離婚夫婦」は実はもっと多い」と、社会学者で「婚活」という言葉の生みの親である中央大学文学部教授・山田昌弘氏は分析する。性別役割分業型(“夫は働き、妻は家事”…
■日本型「愛情の分散投資」とは
こうした日本独特の「夫婦観」について、欧米の人々は驚きます。彼らは一様に言います。
「愛がなくなったのに、なぜ離婚をしないのか」と。
たしかに人生の伴走者たる配偶者のことを、金の出る機械「ATM」呼ばわりしたり、ほうきにまとわりつく「濡れ落ち葉」に喩えるのは、彼らには到底理解の及ばぬ世界でしょう。
ただこれも「性別役割分業型家族の愛情観」に絡む話になってきますが、日本人はもともと「分散」「分業」の意識が強い、あるいは得意なのかもしれません。
西欧文化では、「夫婦」は人生を丸ごと共有しようとします。
対して日本は、夫は夫の交友関係を持ち、妻は子どもがいる場合は、ママ友コミュニティを中心に交友関係をつくります。
時間だけでなく「愛情」すらも、日本では分散されがちです。日本の新橋や新宿などでは、サラリーマン(男性ばかり)が盛り上がり、キャバクラやクラブに繰り出す姿がよく見られますが、これも海外の人々からは大いに驚かれる光景です。そう、日本の男性(夫)は、愛情や関心を家族や妻へ100%注力しなくてもいい。キャバクラやクラブ、アイドルの推し活やゲームなど、多方面に分散できる社会なのです。一方で女性(妻)の側も、持てる愛情をすべて夫に傾けるよりは、子どもや母親や姉妹、女友だちやアイドルの推し活やペットなど、多方面に分散投資することで、日常を心穏やかに過ごすことができるのです。
仮に配偶者が100%の愛情を注いでくれなくても、あるいは共通の時間がなくても日々の潤いが枯渇せず、楽しく生きていける国。それは、先進国では日本くらいかもしれません。