産休に入る女性が、職場の人に贈る「産休クッキー」をSNSで紹介したところ、「配慮がない」「幸せアピールがうざい」「クッキーを配る必要はない」などと大きな物議を呼んだ。かわいい赤ちゃんなどを描いたイラ...
——今年4月の「産休クッキー」の騒動をどのように受け止めましたか
これまでも、育休や短時間勤務の制度の利用者の一部が仕事上の責任を果たしておらず、サポートする同僚が忙しくなっているといった意見がなかったわけではありません。
子どものいない人や独身者がもらう場合、カチンとくる人も存在するのだろうと思います。
産休クッキーのSNS投稿をきっかけとして、いろいろな思いが出てきたのでしょう。
ただ、「炎上」すると、大多数の職場で軋轢(あつれき)が生じているように見えてしまいますが、それは一部であり、支援している職場のほうが多いと思われます。
とはいえ、育休や時短の利用によって、職場に負担がかかるという指摘はその通りです。
職場のフォローなしに、制度利用者が「迷惑をかけて申し訳ありません」と詫びながら休み、同僚は「忙しくなって大変だ」と不満を抱えたまま進んでいくと、多くの軋轢が生じます。
これまで現場単位で何とか解決していたのが、利用者が増えると限界を迎えて、いろんな不満が出ているのではないでしょうか。
このような不平不満を解消するために、制度の正しい理解と、制度利用者とサポートする同僚への適切な評価が求められています。
——これからの労働をめぐって、どのような社会を目指すべきでしょうか
全体として労働力人口は減っていて、需給バランスは需要超過になっています。
若い人の賃金を上げたり、働く人の目線に立って、彼らのライフスタイルを意識した取り組みをしない企業は選ばれなくなっていくでしょう。
育休・時短の制度が導入されて、利用する人が現れ、女性の利用者が増え、男性の利用者も出てきたという流れがあり、仕事と子育ての両立は男女共通のものとなっています。
しかし、社会全体でみると子育てへの寛容さが低い印象です。社会全体で子育てをするという意識がもっと強くなってもいいのではないでしょうか。
個人的には、産休クッキーを配ることに込められた「ご迷惑をおかけします」という意識がしっくりきません。クッキーを配らなくてもよいと思いますし、「明日から休みます。戻ったらまた働きます」くらいの挨拶で良いのではないでしょうか。