内閣府の『男女共同参画白書』によれば、20代男性のおよそ7割、女性のおよそ5割が「配偶者・恋人はいない」状態にある。文筆家の御田寺圭さんは、「恋愛をすること、あるいはだれかとの恋愛関係が成就する確率を高めようと努力することそれ自体が、とくに男性にとって不道徳的で非倫理的な営みとなってしまっている」という――。
よりわかりやすくいえば、女性との恋愛関係が成就するまでのプロセスに「女の子からキモいと思われるかもしれないアプローチをしなければならない」とか「自分が好意を向けてしまうことで不快感や恐怖感を与えてしまうかもしれない」といった倫理的ジレンマが不可避的に存在しており、いまどきの若い男性はそれに耐えられなくなっているということだ。
女の子にとって「キモい」と感じられるかもしれないふるまいをすること、女の子の意に反してグイグイと押しつけがましく好意をアプローチしなければならないこと――それは現代社会の「女性が日常で味わう小さな被害にもしっかり気を配ろう」という社会的風潮に真っ向から対立する加害的な実践である。そのような行為になんらやましさを感じない、よほど神経の図太い人間でなければ恋愛に踏み出すことができないがんじがらめの状況になってしまっている。
よしんば社会の風潮や自らの良識にあえて逆らって加害的な実践をやりとげたところで、相手との関係が成就するかどうかもわからない。こうしたダブルバインドによる認知的ストレスがある一定のラインを超えたとき、若者たちにとって「恋愛はコスパが悪いからもういいや」となってしまったのである。