低用量ピルの効果について、解説している。避妊だけでなく、月経前症候群(PMS)などを抑える効果もある。体調管理や仕事の生産性を上げるために服用する女性も多いとのこと
女性に特有の薬に、低用量ピルがある。服用法は独特で、多くの場合、1日1錠、休まずに21日間服用し、7日間休薬する。
生理痛が重く、学生時代から服用する女性研修医(27)は、ピルを職場のデスクに置いていた。業務が忙しく、飲み忘れを防ごうと考えてのことだった。ところが、ある日、同僚の男性から思いがけない抗議を受けた。
「机の上にピルを置かないでほしい。コンドームを置いているようなものだ」
ピルは、排卵を抑制する働きがあり、妊娠をコントロールできるため、「経口避妊薬」とも呼ばれる。生理痛や倦怠感、生理前に体調不良や気分の浮き沈みなどが起こる月経前症候群(PMS)など、生理に伴う症状を抑える効果もあり、体調管理や仕事の生産性を上げるために服用する女性も多い。
日本医療政策機構の小山田万里子さんが行った「働く女性の健康増進調査」では、回答した女性のうち生理のある1470人の半数超が、生理に伴う症状を「非常に強い」「強い」「やや強い」と回答しており、症状が重いほど、生活の質と生産性が下がることもわかっている。
「女性が積極的に生理前後の体調を管理することは、労働の生産性を高めるうえでも大切なのに」(女性研修医)という。
実際、彼女の症状は大きく改善した。若干のだるさは残るが、以前はトイレから出られないほどだった痛みはなくなり、イライラも消えた。
女性は、「学生時代は『避妊薬』のイメージでしたが、月経困難症の治療にも使うと知り、服用をはじめたんです。使っている友人も多い。医療の現場ですら、これです。男性は馴染みがないかもしれませんが……」と嘆く。
「ピル」=「コンドーム」だから「見せるな」という主張は、あまりに極端だが、ピルに対する理解も服用率も、日本は諸外国ほど進んでいない。2013年の国連人口部の統計では、日本のピルの服用率はわずか1%。フランスが41%、ドイツが37%、アメリカは16%、韓国は2%だ。産婦人科医の宋美玄(ソンミヒョン)さんは、こう分析する。
「日本で低用量ピルが承認されたのは、北朝鮮より遅い1999年。母親世代もピルを知らず、娘にも勧めません。メディアの取材でも、ピルの『効能』より『副作用』を尋ねられることが多く、適正に理解されていないと感じます。女医、特に産婦人科医の服用率は高いですし、番組収録で会うモデルなどもほとんどが服用しています」
ピルは子宮内膜の増殖を抑えるため、婦人病の予防効果も期待できるという。特に日本は、女性が生涯に妊娠する回数が減っているため、生理回数が激増し、子宮内膜症など婦人病罹患者が増えたと言われている。
他国ではドラッグストアで買えるが、日本では医師の処方が必要だ。入手のしにくさも服用率を下げているのでは?
「日本では理解が十分ではなく、婦人科にかかる機会を確保する意味でも、医師による処方が適正だと思います」