消費者が知らなかったコンビニの新事実を伝えている。コンビニ商品が割高なのは、捨てることを前提にしているからという。便利さの裏側にある廃棄をするお金までも消費者が払っているとのこと
「もったいない」は、日本にしかない言葉だそうだ。日本人固有の美徳だと思っていた……が、実際、「もったいない」精神を行動に移している人がどれだけいるだろうか? 問題になりつつも、「仕方ないじゃん」と流されがちなのが、「食品ロス」。日本は、まだ食べられる食品を大量に廃棄する「食品ロス大国」らしい。
『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか(幻冬舎新書)』(井出留美/幻冬舎)は、「ほとんどの賞味期限は2割以上短く設定されている」ことや、「コンビニがスーパーより高いのは『捨てる前提』だから」など、消費者が知らなかった新事実を明らかにし、食品ロス問題について多方向から論じている一冊である。
まず、「賞味期限は2割以上短く設定されている」ということに関して。消費期限(その日までにきっちり消費する必要がある)と違い、賞味期限は「おいしく食べられる期限」を表している。期日を過ぎても「食べたら即、健康に関わる」ということでもないし、なおかつ、それは「2割短く設定されている」。
賞味期限は各企業や業界の判断で決めているものだが、これを短く設定しているのは、出荷された後の流通経路や家庭・店舗の保存環境によって、「おいしい」の期限が変わってくるため。安全を期して、短く設定しているのである。
だが海外と比べても、日本は賞味期限を短く設定する傾向にあるそうだ。湿度が高いことも一因だが、安全に対する要求レベルが高いことも一つの要因らしい。
安全に関わることなので一概には言えないけれど、つまり、適切な保存状態であれば、賞味期限が切れた食品でも、すぐに捨てる必要はないということ。もちろん、自分の目で見て、匂いを嗅いだりして、最後は自己責任で食べるか否かの判断をすることになるが、食品ロスを減らすためには、賞味期限を「守り過ぎる」「安全性に敏感すぎる」のは考え直した方がいいと感じた。
また、本書を読んで一番驚いたことを一つ。コンビニ商品が割高なのは、捨てることを前提にしているからというもの。もちろんそれ以外の理由でも、商品コストは高くなっているのだが、それに加えて「捨てる前提」の「捨てる費用」があらかじめ商品価格に織り込まれているのも理由の一つらしい。コンビニだけではなく、飲食店でも同じような状況にあるのだとか。便利さの裏側には大量の廃棄があり、その捨てるお金まで私たちが払っているという事実は、驚きだった。
食品ロス問題は食品業界や各企業が抱える事情から、もたらされる場合もある。一方、私たち消費者の意識で大きく違ってくることでもあるのだ。本書を読んでいて、私は食品ロス問題を他人事ではないと感じた。こういった意識は、正しい知識を持つことで高められる。本書はその知識と「具体的にどうすればいいのか?」を教えてくれる。
一人一人のちょっとした行動が、この問題を大きく改善させるのではないだろうか?……真面目に考えよう、食品ロス問題。