>>36
カロリンスカ研究所の上田氏が強調するのは次の6点です。
(1)他の高所得国と比較した場合、日本の異性間性交渉未経験(童貞、処女)の割合は高い
(2)本人の意思であれば、異性間性交渉の経験がないことは問題視する必要はない
(3)しかし、性交渉の経験がない者の10人のうち約8人は生涯を通じて結婚したい願望があると回答しているので、性交渉経験がないことは自分たちの本意ではないことを示唆している
(4)出生動向基本調査によると「独身にとどまっている理由」の最も高い割合を占めているのが「適当な相手と巡り合わない」(男女25~34歳)
(5)無職、非正規・時短雇用及び低い収入が男性では異性間性交渉経験がないことに関連していることが分かった
(6)出生動向基本調査では異性間性交渉のみに限定されており、同性間性交渉に関しての研究は行うことができなかった
草食系男子・アニメの影響は?
上田氏は筆者の質問にこう答えています。
「従来、性交渉未経験の割合が多い理由についてはメディアなどでは草食系男子・(アニメなどの)二次元文化の影響などが言われてきましたが、われわれとしてはそうした固定概念よりむしろ、収入や雇用条件といった要因の方が大きいのではないかということに今回注目しています」
「従って、自らの意思(希望)で性交渉未経験・未婚の人に対しては現時点でなんらかの介入が必要とまでは言えないと思っています。しかしその一方で、婚姻希望や性交渉経験の希望があるにもかかわらず未婚・性交渉経験なしの状態の人に対しては、収入や雇用条件などがその要因となっているのであれば、その要因に対してなんらかの支援策が必要と考えます」
上田氏は「男性の未経験である確率と収入・雇用形態の相関関係は必ずしも因果関係を表しているものではない」と断った上で、「研究チームは、こうした問題を抱える人に対しては雇用環境の改善や収入の向上などの政策的介入を検討することも必要ではないかと考えています」と指摘しています。
(おわり)