匿名さん
女性の育児や仕事など、女性の問題ばかりが取り上げられるこのご時世。
しかし、男だって「男ならでは」の問題を抱えて生きづらさを感じています。
男が悩むのは“女々しい”!? そんなことはありません。
男性学研究の精鋭、田中俊之先生がお答えします。
■今回の相談
40代の独身男性です。都内のそこそこ有名な大学に受かり、上京。
その後大学院に進みましたが、大成せず、数年前に逃げるように田舎に戻ってきました。
今は地元で働いており、まあまあ充実した日々です。
ただ、困っているのは、一緒に住む祖父母や親がことあるごとに「いつかいい人と結婚してくれたら」と言うことです。
自分が結婚に向いているとも思えませんが、結婚していない40代は、この地において“変な人”なのです。
朔太郎(仮名)
■ 地方における「結婚するのが当たり前」主義への挫折
まずは落ち着いてください。
いわゆる団塊ジュニアを含むいまの40歳代は、その数が膨大ですので、競争の激しい世代だと言えます。
例えば、受験一つ取っても、都内の有名な大学に合格するのは、簡単なことではありませんでした。
その上、40歳代前半の人々が大学を卒業する1990年代後半は、ちょうど不景気が重なり、就職氷河期が訪れました。
ただでさえ数が多いのに、経済的な理由で入り口が狭まったので、少なくない若者が就職で挫折しました。
1990年代における若者の就職難は、現代でも中年の非正規雇用という深刻な社会問題として尾を引いています。
朔太郎さんの場合、大学受験においては難関を突破し、大学院にも進学されています。
確かに、数年前には「逃げるように田舎に戻った」のかもしれません。しかし、地元での仕事が充実しているご様子です。
朔太郎さんの現在の状況をもって「十分に恵まれているのに」と言うつもりはありませんが、悲観するほどの悪い状況ではないはずです。
それにもかかわらず、「いつかいい人と結婚してくれたら」とご自身の結婚を諦めていない家族の姿勢に、なぜ挫折感を抱いてしまうのか。
これを先に考えてみます。
株式会社クラレは、1996年から新小学校一年生を対象に、「将来就きたい職業」の調査をしてきました。
これに加えて、2015年以降、小学校六年生に同じ調査をしています。
小学校に入学する前の幼い子どもたちの夢は、社会の男女への期待をダイレクトに反映していて、それはそれで面白いのですが、ここではもう少し現実的に物事が考えられるようになった小学校六年生の調査結果を紹介しましょう。
■ 男は小さい頃から「競争して勝て」と育てられる
高学年になっても、やはり男子の夢はスポーツ選手のようです。
2位の研究者に10%近くの差をつけての一位となっています。
3位・ゲームクリエーターは今時っぽいですが、4位・医師、5位・教員と、社会的に地位が高いとされる職業が上位に来ています。
女子の場合は、男子のスポーツ選手のように圧倒的に人気のある職業はありません。
1位の教員、3位の医師の他は、2位・保育士、4位・看護師、5位・動物園・遊園地と、「女性向き」とされる仕事が選ばれています。
「女性向き」と思われているのは、人や動物のお世話をする職業です。
子ども時代を通じて、男の子は他人と競争、女の子は他人と協調するように育てられているため、こうした差が出てきます。
社会的に地位が高いとされる職業は、競争率が高いため、スポーツ選手は当然として、それ以外でも実現するのは難しいことです。
なれるかどうかは、単に個人の努力だけではなく、運や環境といった要素にも大きく左右されます。
それにも関わらず、どうして男だという理由だけで競争しろと煽られ、「大きな夢」を語らなければならないのでしょうか。
百歩譲って、高度経済成長期のように、昨日より明日、明日より明後日が経済的に「豊か」になる社会であれば、競争にも意味があったかのもしれません。
当時は多くの人が、親世代よりも高学歴で、経済的にも恵まれた生活をできるようになる確率が高かったからです。
しかし、どのような時代であれ、僕は男性をむやみに煽って、不安を駆り立てるような言動に対して懐疑的な見方をしています。
一時的に「勝った」としても、「勝ち続ける」ことはほとんど不可能だからです。
しかし、男だって「男ならでは」の問題を抱えて生きづらさを感じています。
男が悩むのは“女々しい”!? そんなことはありません。
男性学研究の精鋭、田中俊之先生がお答えします。
■今回の相談
40代の独身男性です。都内のそこそこ有名な大学に受かり、上京。
その後大学院に進みましたが、大成せず、数年前に逃げるように田舎に戻ってきました。
今は地元で働いており、まあまあ充実した日々です。
ただ、困っているのは、一緒に住む祖父母や親がことあるごとに「いつかいい人と結婚してくれたら」と言うことです。
自分が結婚に向いているとも思えませんが、結婚していない40代は、この地において“変な人”なのです。
朔太郎(仮名)
■ 地方における「結婚するのが当たり前」主義への挫折
まずは落ち着いてください。
いわゆる団塊ジュニアを含むいまの40歳代は、その数が膨大ですので、競争の激しい世代だと言えます。
例えば、受験一つ取っても、都内の有名な大学に合格するのは、簡単なことではありませんでした。
その上、40歳代前半の人々が大学を卒業する1990年代後半は、ちょうど不景気が重なり、就職氷河期が訪れました。
ただでさえ数が多いのに、経済的な理由で入り口が狭まったので、少なくない若者が就職で挫折しました。
1990年代における若者の就職難は、現代でも中年の非正規雇用という深刻な社会問題として尾を引いています。
朔太郎さんの場合、大学受験においては難関を突破し、大学院にも進学されています。
確かに、数年前には「逃げるように田舎に戻った」のかもしれません。しかし、地元での仕事が充実しているご様子です。
朔太郎さんの現在の状況をもって「十分に恵まれているのに」と言うつもりはありませんが、悲観するほどの悪い状況ではないはずです。
それにもかかわらず、「いつかいい人と結婚してくれたら」とご自身の結婚を諦めていない家族の姿勢に、なぜ挫折感を抱いてしまうのか。
これを先に考えてみます。
株式会社クラレは、1996年から新小学校一年生を対象に、「将来就きたい職業」の調査をしてきました。
これに加えて、2015年以降、小学校六年生に同じ調査をしています。
小学校に入学する前の幼い子どもたちの夢は、社会の男女への期待をダイレクトに反映していて、それはそれで面白いのですが、ここではもう少し現実的に物事が考えられるようになった小学校六年生の調査結果を紹介しましょう。
■ 男は小さい頃から「競争して勝て」と育てられる
高学年になっても、やはり男子の夢はスポーツ選手のようです。
2位の研究者に10%近くの差をつけての一位となっています。
3位・ゲームクリエーターは今時っぽいですが、4位・医師、5位・教員と、社会的に地位が高いとされる職業が上位に来ています。
女子の場合は、男子のスポーツ選手のように圧倒的に人気のある職業はありません。
1位の教員、3位の医師の他は、2位・保育士、4位・看護師、5位・動物園・遊園地と、「女性向き」とされる仕事が選ばれています。
「女性向き」と思われているのは、人や動物のお世話をする職業です。
子ども時代を通じて、男の子は他人と競争、女の子は他人と協調するように育てられているため、こうした差が出てきます。
社会的に地位が高いとされる職業は、競争率が高いため、スポーツ選手は当然として、それ以外でも実現するのは難しいことです。
なれるかどうかは、単に個人の努力だけではなく、運や環境といった要素にも大きく左右されます。
それにも関わらず、どうして男だという理由だけで競争しろと煽られ、「大きな夢」を語らなければならないのでしょうか。
百歩譲って、高度経済成長期のように、昨日より明日、明日より明後日が経済的に「豊か」になる社会であれば、競争にも意味があったかのもしれません。
当時は多くの人が、親世代よりも高学歴で、経済的にも恵まれた生活をできるようになる確率が高かったからです。
しかし、どのような時代であれ、僕は男性をむやみに煽って、不安を駆り立てるような言動に対して懐疑的な見方をしています。
一時的に「勝った」としても、「勝ち続ける」ことはほとんど不可能だからです。
「独身でいたい」が理解されない40男の苦悩 | 男性学・田中俊之のお悩み相談室
まずは落ち着いてください。いわゆる団塊ジュニアを含むいまの40歳代は、その数が膨大ですので、競争の激しい世代だと言えます。例えば、受験一つ取っても、都内の有名な大学に合格するのは、簡単なことではありま…