匿名さん
「誤解されやすい事項1」として挙げられるのは、「性暴力は抑えがたい性的欲求による」という誤解である。性犯罪の根底にあるのは、セクシャルな言動を通じて表現された他者への支配欲である。それゆえ、性的関心はもちろん存在するものの、いわゆる一般的に考えられているような性的満足を得ることだけが目的ではないことも少なくない。「性欲が旺盛だからではない」精神科医が解説"一発アウトの性加害"を犯してしまう本当の理由 香川照之、エネオス前会長…地位のある中高年男性がなぜ
俳優・香川照之の性加害報道に続き、ENEOS(エネオス)ホールディングスの前会長も同様にホステスへの性加害が報じられ電撃辞任するなど、地位のある中高年男性のスキャンダルが絶えない。そんなとき、彼らは番組降板、辞任などの責任の取り方をするが、性暴力そのものの病理にフォーカスせず、臭いものに蓋をするような幕の引き方でよいのだろうか。精神科医であり、法務省の治療プログラムにも携わり、性加害者の分析・治療に当たる聖マリアンナ医科大学准教授の安藤久美子さんが解説する――。
「誤解されやすい事項2」は、「性的欲求は衝動的でコントロールが不能である」という誤解である。加害者はほとんどの場合、「抵抗しないであろう」者を選んで加害行為を行っている。このことからしても、コントロールできない衝動的な行動であったなどということはできない。
「誤解されやすい事項3」は、「加害者は発覚を恐れて見知らぬ被害者を選ぶ」という誤解である。実際には、親密な関係間、家族間のほうが、性犯罪の発生率は高いのである。しかし、親密な関係であるほど、被害者は「こんなことで訴えて関係を悪くしたくない」と考えるだろうし、加害者もそうした被害者心理に付け込み、「こんなことでは訴えないだろう」などと高をくくっている。これが「誤解されやすい事項4」にも挙げたように、性犯罪はすぐに発覚するどころか、ほとんどが暗数となっている大きな理由のひとつなのである。