匿名さん
前出の天野さんは、男性を上回る「女性の東京一極集中」の理由を「卒業後の仕事の問題が大きい」「女性たちが就職したいと思えるような魅力的な職場が地元にない」と分析し、地方の少子化とは人口問題というよりも労働問題である、と鋭く指摘する。「魅力的な仕事も生活もない場所から逃げていく…」地方が直面する"女性流出"の本当のヤバさ 地元に残った女性を支援しても少子化は止まらない
岸田文雄首相も小池百合子東京都知事も、年明けすぐに少子化対策の重視を掲げた。コラムニストの河崎環さんは「日本では女性が地方を見限って東京に流出し続けており、こうした現状を直視しないままで少子化対策を考えても効果は上がらない。そしてこれは、米国や欧州で起きているような“分断”が、日本でも起こっていることを表している」という――。
若い女性が「ここ(地方)にいたい」と思える職や職場、幸せと感じられるライフスタイルがそこにはないのだ。地方自治体が、東京に向かわず地元に残った女性(相対的に保守的な価値観で、もともと出産傾向にある女性)を相手に「ママを応援しよう!」と漠然とした子育て支援の充実を図るにとどまるのは、少子化対策としてズレている、と天野さんは手厳しい。
(中略)
現代的な価値観や能力を備えた女性が地方を見限って東京へ流出し、流出の結果の搾りかすのようにして、古くてそれ以外の生き方に排他的な家族観や強固なジェンダーギャップが地方に取り残される。地方ではそのように閉じた構造の中で「少子化で子どもが生まれないのはどうしたらいいか」と、既に出産傾向の高い属性層を相手に、子育て支援策へ財源が振り向けられる。現代の日本では、そういう持続的とは言いがたい形での人口再生産がメインなのだ。
少子化は、いわゆる先進国病の一つであることには間違いはない。だがこの、東京と地方のそれぞれに様相の異なる少子化構造から感じ取れるのは、人種や階級や経済的地位など、居場所による価値観の対立がこじれて政治や社会に分断を起こした米国や欧州と同様の分断が、一見平穏そうな日本にも都会対地方という形で確実に起こりつつあるということである。