匿名さん
「あらあら、ちょっと見ない間に美人さんになったわね。いくつになったの……ん?」「これはタイツよ!」…葬儀会場に現れた「喪服警察」のヤバすぎる言動(志田 あゆみ) @gendai_biz
葬儀の仕事をしていると、式場で私服警察ならぬ「喪服警察」に出くわすことがある。多くは年配の女性で、彼女らが取り締まるのは犯罪ではなく葬儀マナーだ。マナーを守るのはもちろん大事だが、正直「全くおっしゃるとおりですが、厳しすぎませんか?」と思ってしまうことも多々。今回は、喪服警察が取り締まりを行ったマナーやしきたりの違反行為をご紹介したい。
60代女性の目は、相手の黒いストッキングに釘付けになった。そして次の瞬間、喪服警察に早変わりしたのだ。
「あなたこれ……40デニールでしょ!?」
デニールとは、糸や繊維の太さを表す単位のことだ。一般的には、ストッキングやタイツの厚さを表示するときに使われる。通常、ストッキングとして販売されているのは25デニール以下のものだ。
「これじゃストッキングじゃないわ、タイツよ! 今すぐ黒いストッキングを買ってきなさい!」
葬儀にふさわしいのは、うっすら地の肌が見える黒いストッキングで、地肌がまるで見えない真っ黒なタイツはカジュアルな印象を与えるためNGとされる。だから、喪服警察の言っていることは正しかった。
「ちょっとあなた、ここに来てみて! あなたは、何デニールのストッキングをはいてるの? ほら、色味が全然違うでしょう」
喪服警察は、親族控室にいる女性一人ひとりに声をかけ、ストッキングの薄さを検証し始めた。そしてやや色の薄いストッキングを見とがめては「これは少し薄すぎるわね。何デニールなの?」と尋ねる。一刻も早くストッキングを買いに行かなければならないはずの姪御さんは、固い笑みを浮かべながら喪服警察の検証に付き合っていた。
「デニール」という言葉をこんなに聞いたのは、この日が初めて。この喪服警察には、心の中で「デニール刑事(デカ)」と命名してしまった。そして、姪御さんが過度に緊張していたわけが、なんとなくわかった。
ちなみにストッキングは、全く同じデニール数のものであっても、体型によって厚みがまるで違って見える。引っ張られたぶん、薄くなる。姪御さんの足は、すらりと細かった。