匿名さん
私が『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)を書いたきっかけは、「土井善晴の大人の食育」といった勉強会(2015年)で、若い女性、結婚を控えたカップルや、子供をもった女性が、大勢来てくれたとき、彼女たちから、「幸せな家庭を持ちたいけれど、料理ができない、料理した事がない」「子供を手料理で育てたいと思うけれど、どうすればいいか分からない」という切羽詰まった声を聞いたからでした。「ご飯を炊いて具沢山の味噌汁を作ればいい」料理研究家・土井善晴が“一汁一菜”を提案する理由 | 文春オンライン
料理は命に関わり、自然の摂理と共にある――。料理研究家・土井善晴氏による「和食文化を救う一汁一菜」(「文藝春秋」2023年4月号)の一部を転載します。◆◆◆豊かな自然を背景に食は、とくに飢饉や戦争など…
それまで私は彼女たちの苦しみ、悩みを理解していなかったので本当に驚きました。私は日常の料理をたいそうに考えていませんでしたから、ごく当たり前に「ご飯を炊いて具沢山の味噌汁を作ればいい」と話したのです。一汁一菜でまずはオッケー、一汁一菜は手抜きでないと、ごく当たり前にしてきたことを彼女たちに話したのです。彼女たちみんなが喜んで安心したようでした。
それ以上の料理は、時間があるとき、心に余裕があるとき、お金があるときに、食べたいもの、食べさせたいものを作ればいいのです。味噌汁を作るだけなら、10分もしないうちに温かいものが食べられます。それ以上のことは、やらされるのではなく、自分の意思でやることです。そうすれば料理は楽しみになる、できるのです。メインディッシュの作り方なんて後回しでいいのです。