匿名さん
Aさんは、葬儀費用等をBさんのプライベート用口座から引き出すため、いつも仕事で使っている金融機関とは別のサブバンクを訪れました。そして、父親の口座から120万円を引き出そうとしたそのときです。窓口の行員から、120万円の用途を尋ねられました。銀行員「残念ですが、対応できません」…父の葬式代120万円が必要な48歳・息子、銀行の対応に激昂「血も涙もないのか」【司法書士が解説】 | 幻冬舎ゴールドオンライン
町工場の2代目であるAさん(48歳)。先代であり父親のBさんを亡くし、父親名義の口座から葬儀費用を引き出そうとしたところ、窓口の銀行員に「残念ですが、今回のお引き出しは対応いたしかねます」と言われてしまいました。いったいなぜなのでしょうか。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が具体例をもとに、相続発生時、緊急費用を引き出せるようにするためのポイントについて解説します。
Aさんが正直に、「実は1週間前に父が亡くなってしまったので、これは葬儀費用です」と答えたところ、行員の方が後ろに引っ込み、しばらく待たされてしまいました。
5分~10分後、窓口に現れたのは、先ほどの行員の上司でした。そして、上司はAさんにこう声をかけたのです。
「この度は誠にご愁傷様です。残念ですが、今回のお引き出しは対応いたしかねます」
銀行のあまりにそっけない対応に、Aさんは思わず「おたくらは血も涙もないのか!」と激高してしまいました。
亡くなった方の預貯金というのは、民法で定められた相続人全員の共有財産となります。したがって、銀行としては被相続人が死亡した時点での預金残高を確定する必要があるわけです。
また、ただちに口座を凍結しなければ、親族が故人の口座から勝手に預貯金を引き出す場合があり、他の相続人とのトラブルに発展する可能性が高まります。この2つの観点から、銀行は口座名義人が亡くなったことを知ると、すぐに口座を止めるという運用をしているのです。
したがって、葬儀費用等の緊急費用を捻出できるようにするためには、
・預貯金の引き出しは必要最低限にとどめる
・生前に葬儀費用分だけ先払いしておく
・相続人全員であらかじめ合意をとっておく
・生命保険金を活用する等し、凍結されることのないお金を準備しておく
といった対策をとることが重要です。
また、こうした預貯金の緊急時の引き出しに対応できないトラブルが多く発生していることを受けて、令和元(2019)年7月1日に「預貯金債権の払戻制度」という新しい制度が施行されました。
ただし、この制度を利用する場合、引き出した相続人は相続財産を受け取ったとみなされるため相続放棄ができなくなります。
したがって、財産の全容(借金の有無・誰が相続人か等)がわからない状態で「預貯金債権払戻制度」を利用することは非常に危険であるため注意が必要です。