匿名さん
なぜ欧米に比べてわが国では、極端に無痛分娩が少ないのでしょうか。先ほど述べた「母親たるもの出産の痛みくらいは我慢して当然」という「非科学的精神論」がいまだに蔓延っている現状もあるでしょうが、それに加えて経済的理由も大いにありうることと思います。無痛分娩は「贅沢でずるい」のか?…海外では当たり前なのに、日本人だけが「無痛は甘え」と考える根本原因 地域偏在を解消し、非科学的な精神論はやめるべき
先日、知人から「専門外であることは承知の上だけど……」との前置きで「無痛分娩ぶんべんについて、その是非とかかるお金にかんして、ファイナンシャルプランナー(FP)資格を持つ医師としての意見を聞かせてほし…
公的保険制度のない米国は別ですが、他のG7諸国では出産にかかる費用の自己負担分をゼロにすべく国レベルで動いてきました。そしてその費用には無痛分娩にかかる部分も含まれているのですが、日本の場合、出産育児一時金があるとはいえ、昨今の分娩費用の増加によって、地域によっては無痛でない通常の分娩でさえ“足が出てしまう”ケースもあると言われています。このような現状のもとで、無痛分娩を選択肢とすることには、経済的なハードルがあると言えるでしょう。
さらに、無痛分娩施設に極端な地域偏在があることから推測されるのは、医師とくに麻酔医の不足です。ご存じのとおり、わが国における医師不足、医師数の地域偏在問題が実在する状況では、必然的に産科医の数にも地域差が生じます。さらに無痛分娩には硬膜外麻酔という処置を要するため、麻酔科医もしくはこの麻酔手技に習熟した産科医が少ない地域では、安全な無痛分娩を行うことは極めて困難です。
このように、日本においては無痛分娩もさることながら、そもそも出産について欧州と比較しても、“優しくない”風土と社会が現存していると言えそうです。そしてそれだけではありません。妊産婦さんのうちでも、とくに「低所得者」に“優しくない”現状があるのです。