匿名さん
「小学生のうちは、授業の内容は何でもわかってしまうので、いつも挙手していました。最初のうちは先生からかわいがられたけど、一カ月もしないうちに目の敵にされるようになり、『できる人は黙ってなさい!』と言われて……。クラスの誰もわからない内容を私だけがわかったので、先生のペースが乱れたのだと思います。そんな態度を見ているうちに、周囲の子も私に冷たくなっていきました。決定打になったのが、クラスの子の上履きが隠された事件。私が犯人だと先生に決めつけられてしまったんです」IQ130超「ギフテッド」女性が小学校の担任に嫌われた切ない理由 「人の感情を“データ”で理解しようと…」 | AERA dot. (アエラドット)
ギフテッドと呼ばれる人たちがいる。高い知性や能力を発揮する一方で、発達の偏りや気性の激しさなど、さまざまな困難を抱えるケースも多い。好評発売中の書籍『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人…
その他にも、人間関係での小さなつまずきが絶えなかった。例えば、先生や周囲の友達が間違った意味で言葉を使うたびに、良かれと思ってそれを訂正していた。「自分が知っているなら、正確なことを相手に伝えないといけない」という、感情よりも合理性を尊重する気質ゆえの行動だった。
周囲よりできるのに愛されない。かと思えば、自分が得意ではない音楽の担当の先生からはかわいがられた。良い成績を出している私よりも、悪い成績を出している私のほうが大人は好きなのかな……そう思うような経験を重ねるうちに、MIOさんは「人間という存在」を学ぶために、映画をたくさん見るようになった。
「人の感情を『データで理解しよう』と考えたんです。私にとって映画は、いろいろな登場人物からさまざまな考え方のパターンが学べる存在でした。映画を見ながら、『どうしたら人が喜ぶか』とか『どういう人が素晴らしいとされるのか』などの情報を頭の中にインプットしていきました」
MIOさんの場合はギフテッドゆえの気質だけでなく、家庭環境も思考や振る舞いに影響を及ぼしていた。というのも、両親は上昇志向の強いタイプで、MIOさんに「立派な人間になれ」と常に期待していたのだ。
だからこそ、学校でつらいことがあっても、両親にはなかなか相談できなかった。「周囲と打ち解けられない」と話すと、「周囲から人気のない子だ」と思われるような気がしたからだ。集団無視や上履きを隠されるなどのいじめを受けた際は、さすがに両親も気づいたが、「原因はあなたの成績がいいことだ。だから、愚かな人たちは放っておきなさい」といった、解決にはならない助言しかもらえなかった。
「普通、子どもは『頭脳』と『心』を交互に行き来することで育っていくものだと思うのですが、私の場合は『頭脳』だけが最初からあって、しかも『心』があまり育たない環境にいました。それが悪いように作用していったのだと思います。親にとっての理想の自分になろうとしたり、周囲に好かれようとして偽りの自分を演じるうちに、だんだんと“本当の自分”がわからなくなっていきました」