匿名さん
以前記事で「母性・育児神話」について取材したが、私は無痛分娩が少ない理由のひとつにこれも絡んでいると考える。「生みの苦しみ」を味わい「時間と手間をかけた育児」を行うことにより、母性が育まれ、子どもが健全に育つという日本古来の“神話”だ。 だからこそ、帝王切開や無痛分娩、ミルクや市販のベビーフードを使うこと、保育園に預けること、ひと昔前なら紙おむつを利用することはすべて「楽して手抜きなダメ育児」と批判される。無痛分娩にまつわるネガティブな都市伝説が少なくないのも、母性・育児神話がはびこっているからこそなのではないか。 いわく「生みの苦しみがあってこそ、母性が生まれる(だから無痛で産んだら、育児放棄する母親になる)」「無痛分娩で産んだ子は自閉症になりやすいらしい」などなど……。 「『出産時に痛みを感じてこそ子どもへの愛情が沸く』という説には、科学的根拠(エビデンス)はありません。自閉症へのリスクについても同様です」(稲葉医師) ■医療の専門家が持ち出す母性・育児神話 今回、話題に上がった「“無痛”分娩で失うもの」というシンポジウムの内容も、各人がSNSで発信するなら、それは個人の考えなのでありだと思う。しかし、それを学会で発表するのは問題ではないか。科学的根拠のある説を覆すには、経験からくる『私はそうは思わない』というお気持ちではなく、広範囲で偏りのない調査や慎重な研究の裏打ちが必要だ。「無痛分娩はかわいそう」助産学会シンポジウムで展開された「母性・育児神話」の荒唐無稽(若尾 淳子)
助産学会 学術集会で行われた「“無痛”分娩で失うもの」というタイトルのシンポジウムのポスターに多くの人が違和感を抱き、X(旧Twitter)で話題になっている件について、前編で紹介した。しかし出産・育児にまつわる「手をかけ・苦労(痛みや辛さを我慢して)こそ母親」という母性・育児神話とでもいうべき説は、なにも無痛分娩否定論だけに限った話ではない。出産や子育てにかかわる母性・育児神話に違和感を覚えるライターの若尾淳子さんが、4児の母であり、産婦人科医で関東中央病院・産婦人科医長の稲葉可奈子医師に話を伺った。

