匿名さん
「最近の貧困にはにおいがないんです」。あるケースワーカーは明かす。貧困に陥った人が最初に削るのは、衣食住のうち衣類。その後住環境に気を配れなくなった時に発するにおいが「貧困のサイン」となる。だが最近は周囲の目を気にしてか「衣・住」は最後まで保ち、いきなり食を削る人も多いという。<貧困の「実相」>(上)サインなき飢餓 「衣・住」の前に「食」削る
食べるものにも困る極度の貧困が、静かに広がっている。病気や失業など誰にでも起こり得るつまずきが、深い落とし穴へとつながることもある。
安否確認のスタッフが二十四時間常駐する、JR川崎駅近くの高齢者向けマンションから食べ物を受け取りに現れたのは、気品のある女性(82)だった。 定年まで東京都庁に勤め、大酒飲みの夫と別れた後は女手一つで娘(39)を育てた。月額二十二万円の年金から十三万円の家賃を出すのは負担が大きいが、「お母さんがここに住んでくれたら安心」と娘に勧められた。
今年に入り、その娘が心の病で休職した。離婚してほかに身寄りのない娘の生活費を肩代わりするため、家賃とは別にかかる食費四万五千円は支払えない状態に。「毎日毎日おなかがすいて、敗戦時と同じ状況」。引っ越しも考えたが、貯蓄もない。身の上話を聞いて思わず小さな手を握りしめた。女性の目からぽとぽと涙がこぼれた。