匿名さん
課長が子どもの看病で急に休みを取ることは、部下の女性の有給休暇にも影響を及ぼした。課長が行うはずだった面接業務をカバーするため、有休を取りやめて出社せねばならなかった。「私は“子持ち様”がきっかけで転職した」育児社員をサポートする側の声。国・企業が目をむけるべきこと
子育て中の社員の業務を恒常的にサポートすることに悩み、転職した女性がいます。女性の証言や識者への取材から、企業や国が向き合う問題について考察します。【ネットスラング『子持ち様』】
とにかく人手が欲しかったが、仕事が属人化し、社員を補充するなどのフォローもなかった。「これなら1人でやっていた時のほうが精神的にも楽じゃん」と不満がたまっていった。
同時に、子育て中の女性に対して負の感情を抱く自分に対する嫌悪感にも悩まされた。
業務のサポートを見込めない周囲には相談できなかった。だからSNSに吐き出した。「育休明けで時短の上司…」「戻ってきても土日の対応は私」「上司が子持ち様でモチベーションは下がり、残業は爆増」ーー。
では、どのような環境であれば転職を決断しなかったのか。
女性は、「インセンティブと評価があればもちろんいい。私の場合はその中でも評価だったかもしれない。上司が休業中の1年間はフル稼働し、その後も走り切った。でも、当事者の課長を含む誰からも評価されなかったのが悲しい」と語った。
さらに、これ以上頑張っても会社は変わらないという閉塞感もあった。
「私は上司の子どもを育てるために頑張ったわけではない。会社幹部は『支える側』にも目を向けなければ、嫌気がさして退職する人が相次ぐと思う」
この女性のケースや企業が取り組むべきポイントについて、専門家はどう見たのか。ハフポストは、少子化や働き方改革に詳しい相模女子大学大学院の白河桃子特任教授(人的資源管理)に話を聞いた。
白河さんはまず、前述した女性のケースについて、「企業が対策を取るべきだった」と指摘。女性が上司の産休・育休中に1人で仕事をこなしたり、復帰後の上司の仕事を負担させられている点に触れ、「女性の頑張りに応じたインセンティブや評価がなかったのは辛い話だ」と語った。
「理想は『誰が休んでも回る職場』だが、そのためにはまず企業の制度設計をアップデートしていかなければならない。インセンティブや評価はなかでも重要で、乗り遅れる会社は優秀な人材を確保できなくなり、淘汰されていくことも考えられる」
さらに、白河さんは家事や育児が女性に偏るジェンダー不平等の問題点についても言及した。
妻に家事や育児の負担が偏っている場合、子どもの熱で休んだり、早退したりする負担が妻側の企業に一方的にかかってしまう。夫婦で家事・育児を分担できていれば、妻側の企業に偏る負担も減る。
妻側の企業が育児支援などを整えている場合、夫側の企業がその支援に「フリーライド」(タダノリ)しているケースもある。こうなると、夫婦間の家事・育児の負担が女性に偏る問題を解決することはできない。