匿名さん
連日、在校時間は15時間ほどに上った。注意して見守っていたからか、幸い大きなトラブルは起こらなかった。次は子ども同士の関係を深めてもらおうと考え始めた矢先、体に異変が起こり始めた。「先生が壊れる」若手教員に病休者が多い深刻事情
若手の教員が追い詰められている。関東地方の公立小学校に勤める30代前半の女性教諭は2022年度、ある学年でクラス担任を務めてほしいと管理職から頼まれた。この学年は以前から、暴力をふるう子や授業中に座ってい…
胸が痛み、息が苦しい。帰宅途中、しゃがんで動けなくなることもあった。クラスをよくしたい、子どもを導きたい。そんな意欲も失われていた。
ある朝、いつものように支度を終え、出勤しようとしたが、体がまったく動かなかった。涙がとまらず、学校には行けなかった。病院で精神疾患との診断を受け、当面、休職することになった。
教員として、忙しいながらも成長する子どもの姿にやりがいを感じてきたし、仕事は楽しい面もあった。休まざるを得ないのは不本意で、つらかった。
なぜこうなってしまったのか。
振り返ると、クラスを1人で抱え込み、孤立していたのかもしれない。学校では病気などで休む教員が数人いて、欠員の補充もされなかった。校長や教頭といった管理職も授業を受け持たざるを得ない状況だった。
ほかの教員もほぼ全員が学級担任。それぞれが手いっぱいだった。クラスをどうするか、相談できる人はいなかった。管理職は、支援する人材をクラスに入れるなどの配慮はしてくれなかった。
「もっとサポートが欲しかった。仕事が必要かどうか考え、量をもっと絞って欲しかった」。振り返って、そう思う。
教員の働き方改革を支援するNPO法人「共育の杜」の藤川伸治理事長は、若手教員のなかで病休者の割合が高くなっていることについて「気安く相談に乗ってもらえる中堅が少ないうえ、若手教員の面倒を見たり相談に乗ったりする職場全体の空気が薄くなり、若手にしわ寄せがきている」とみる。
1971〜74年に生まれた第2次ベビーブーム世代が成長するのに合わせて大量採用された教員が近年、一斉に退職し、それを補う形で職場に若手が増えた。
現在の40代が新卒のころは特に採用が少なく、支え手が不足している状況だ。このため、若手に対して指導役になる中堅教員が少なくなっており、さらに多忙のためコミュニケーションの機会も減っているという指摘だ。
どうすればよいのか。
藤川さんは、教職員が信頼できる相談窓口を都道府県教委が設けたり、市町村教委が各学校に、教職員の健康について話し合う「衛生委員会」をつくるよう促したりといった取り組みが有効だという。