匿名さん
【海老原】女性が解放・平等化されたというのは大いに納得できます。が、だから「好き好んで」独身でいるとは思えないのです。昨今の調査を見てみるとよくわかります。30代未婚女性のうち「独身でいい」は2割で、7割強は「いつか結婚したい」と考えていますから。ちょっと下世話な話ですが、30代前半未婚女性の4割が性体験を持たず、現在彼氏がいない人が4人に3人、同棲経験ありは9人に1人、現在同棲中は1%ですもの。つまり「恋愛も同棲も色々経験したけど独身がいい」というのではなく、「そもそも出会う機会も付き合いも少ない」というのが現実でしょう。女性にとって「結婚・出産の価値」が急落している…経済学者が指摘する「30代前半女性の未婚率4割」の背景 仕事の魅力が上がるほど、出産・子育ての魅力は相対的に下がる
最近出生率の回復に成功していたように見えていた国々でも、出生率が低下している。なぜか。亜細亜大学経済学部教授の権丈英子さんは「仕事(ワーク)に比べて生活(ライフ)の魅力が相対的に低下すると、結果として少子化が起きる」という。『少子化 女“性”たちの言葉なき主張』を上梓した雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんとの対談をお届けしよう――。
確かに現在は、自由・平等です。でも、女性は大いに忙しくもなりました。戦前は就学期間が短く14歳で社会に出た。30歳までに16年もありました。昭和の頃は高卒が主で、18歳で社会に出たから、30歳までに12年ありました。現在は、女性でも四大卒が主流となり、30歳までの期間はたった8年。しかも、社会に出たら男性と同等に仕事を覚えて出世競争となる。こんな環境なのに、30歳になると「もう出産は厳しい」「賞味期限切れ」と言われるんだから、未婚率が上がるのもむべなるかな、でしょう。
【権丈】30歳になるまでに昔は16年、今は8年というのも大切ですが、結婚相手を見つけるのには、そう何年もの時間はかからないですね。要は、毎日の中で時間に余裕があることが大切で、働く時間を短くする社会的な要請が、以前よりも強まっているとは思います。
昔は、企業の人事がお嫁さん候補を採用することを意識していて、いわば企業が、会社の中に結婚市場を準備してくれていたから、会社に長い時間いても配偶者と出会う機会が多かったと思います。今は、企業はそういう意識で採用していないでしょうね。そうなると、企業に長い時間縛り付けられていること自体が、出会いの機会を喪失することにつながります。やはり、労働時間を中心とした働き方改革は重要ですね。
【権丈】人類の長い歴史を考えると、最近まで、ジェンダー平等とはほど遠く、男女役割分業が当たり前であった社会が急激に変わろうとする屈折点に、今はあたるんですよね。こうした大きな変化の時代は先を見通すのが難しい。高校生や大学生の女性は、たとえば40、50歳になる頃の社会を想定し、その時に最適になるよう、学校での進路を選択する必要があります。
【海老原】そうした屈曲点にあるのにもかかわらず、周囲が昔のままの常識を持っており、そこに軋みが生まれているのだと思っています。女性たちに「30歳までに結婚して子どもを産むべき」という話はその典型でしょう。行政もマスコミも何の疑問も持たず、そうした話を垂れ流しています。こうした矛盾を解きほぐす必要があるのではないでしょうか。