匿名さん
田中さんは、若いときは「男性からチヤホヤされる女性」という役周りを求められて、自分でもそれを楽しんでいました。ところが40代になって、そのような役回りがだんだんと求められなくなり、そのことにストレスを感じるようになったのです。「男性にチヤホヤされなくなった」悩む40代女性に現れた症状「男性と一緒だと…」の根本原因
独身を通してきた人をはじめ、配偶者と死別・離別した人など、世の中にはさまざまな事情で「おひとりさま」として暮らす人がいます。しかし一口におひとりさまと言っても、年齢を重ねた後も幸せに生きていける人と、不安やストレスにさいなまれながら生きていく人に分かれるのが現実です。両者を分ける「壁」の正体は何なのでしょうか。生前整理・遺品整理のプロ、山村秀炯(やまむら・しゅうけい)氏の書籍『老後ひとり暮らしの壁』から抜粋して、その答えをお届けします。今回のテーマは「理想と現実のギャップ」について。
断っておきますが、田中さんは「嫌な人」ではありません。ただ若い頃に求められた役回りが自分に合いすぎていて、田中さん自身の仕事のストレス解消にもなっていたために、自分の失策ではなく加齢という予期しないかたちでそれが奪われてしまったときに、自分を見失ってしまったのです。
● 理想の自分と現実とのギャップ
このような危機は多くの人が経験します。
たとえば、会社で営業として優秀だった人が管理職になったときに成果を出せず「優秀な社員」というアイデンティティを失うとか、ひとりっ子として可愛がられていたのに、妹や弟が生まれたことでその地位を奪われて「赤ちゃん返り」するとか、枚挙にいとまがありません。
田中さんの場合は、仕事ができるようになって責任も大きくなりストレスも多くなったのに、これまでのストレス解消法であったプライベートでは逆に主役になれなくなったことで、無意識にメンタルが追い詰められてしまったのです。
治療の軸になったのは「仕事もできて異性からチヤホヤされる私」という自己像を、「異性から褒められなくても自分で自分を認められる私」という方向へ変えていくことでした。
他人からの承認をアイデンティティの中心においていると、何らかの理由で他人からの承認が得られなくなったときに、自己同一性が保たれなくなってメンタルが危機に陥ってしまいます。