匿名さん
「介護崩壊」が現実味を帯びてきてしまった最大の原因は結局のところ、デフレ不況期という特殊な経済状況だから吸収できたマンパワーの規模を基準にして(つまり今後もその人員がずっと維持されることを前提にして)日本社会の「高齢者福祉」の基本的な制度設計を組んでしまったことだ。このままだと2040年までに"介護崩壊"が起きる…介護を「だれもやりたがっていない仕事」にした決定的要因 よりよい賃金の業界へと人材が去っていく
介護事業者の倒産が相次いでいる。東京商工リサーチの調査によると、2024年1月~4月の倒産件数は同期間の過去最多だったという。文筆家の御田寺圭さんは「日本はデフレ不況期という経済状況でのマンパワーの規模を基準にして、高齢者福祉の基本的な制度設計をしてしまった。それが今、成り立たなくなっているのだ」という――。
この楽観的すぎる制度設計は、突如としてやってきたインフレと人手不足によってみるみる崩壊して成り立たなくなってしまった。
起こったこと自体は「好況期には、人材はよりよい待遇をもとめて移動する」という経済学で説明される初歩的な現象でしかないのだが、どうやら「失われた30年」という年月は、そのようなごく当たり前の事実をすっかり忘れさせるには十分な長さを持っていたらしい。
2040年ごろの要介護者のニーズを満たすためには、いまより60万人近い介護人材の増員が必要という推計がある(日本経済新聞「介護職員、40年度までに57万人の増員必要 厚労省推計」2024年7月12日)。あくまで推計とはいえ馬鹿げた数字としか言いようがない。なぜなら2040年ごろに世に「新卒」として送り出される18~22歳くらいのフレッシュな人材はそれこそ60万人前後になるからだ。ありえない仮定だが、かれら全員を介護職にしなければマンパワーを充足できないほどの深刻な状況がどうにかなるはずがない。